来雨

大雨の中、彼は家の前で俯いて立っていた。
何を話しても答えるでもなく立っている彼を家に入れた。
風呂を沸かし、彼の手を引き一緒に入る。
彼の身体を丹念に、無数の傷を流すかのように撫で洗った。
彼の身体を乾かし、手を引いてベッドに入る。
守るように後ろから包み込む。
身動ぎしてこちらを向く彼。
脚に膨らみが当たる。
身体を下ろしていき、起立したモノに唇を宛がう。
彼の手で、他者の身体で、毎日慰めているそれを丁寧に舐める。
私で気持ちよくなって欲しい、それだけで頭がいっぱいになってほしい。

そして、嫌なことから一時でも逃げてほしい。

精は口で受け止めて、全て飲んだ。
そしてそのまま彼を抱え込んで眠った。
口を漱いでしまったら、その間に彼が居なくなってしまうような気がしたから。



太陽が高く昇っていた。
雨は止み、昨日が嘘のように晴れ上がっていた。

テレビから彼の声が聞こえる。
隣に温もりはもう無い。