あの空は綺麗だった
綺麗な夕焼けだ。
おもわず学校の窓から携帯で撮影していた。
雲と、空と、山と、夕焼け。
見事な調和でそこに存在していた。
下を見ると、彼が部員と談笑しながら校舎に戻って来ていた。
目が合い、彼は手を振ってバイバイと声を掛けてきた。
僕は手を振り返すので精一杯だった。
その日から、これは、という空を撮影するようになった。
彼とは3年目の今でも同じクラスだ。
大した会話もせず、ここまで来てしまった。
けれど、彼の笑顔を見ているだけで幸せだった。
文化祭ではクラスの出し物としてダンスをする。
その練習を河原でしていた。
帰り道、彼は自転車の後ろに乗れと誘ってきた。
僕は断ってしまった。
彼は構うことなく強引に後ろに僕を乗せて自転車を漕いだ。
しっかり掴まらないとバランスが崩れてしまいそうだった。
グングン進む自転車。
秋の匂いと、夕焼け空だった。
あれから数年。
携帯の画像なんて残っていない。
けれど、あの空は綺麗だった。