ぼくの背がこんなに伸びた理由

「おねえちゃん!」

両手いっぱいに野草を抱えて走ってくる弟を抱き止める。

「おかえり」

「あのね、森の中で変なおにいちゃんと会ったの!」

弟の後から歩いてくる男。

「こんにちは、いやこんばんはかな」

片手で被っていた帽子を持ち上げ挨拶する男。
私も挨拶を返した。

こんな人里離れた森で男がいるなんて。
わざわざ遠くを選んで来たのに……。



弟は変わっている。

絵を描いている私が、黒色の絵の具が無くなったと言えば、カラスを絞め殺して持ってきた。
家が燃えた時は、持っていたコップの水をかけて見続けていた。

その時目に入ったものでなんとかしようとしてしまうのだ。

いつか他の人に危害が及ぶ……。
そう感じた私は、弟と二人で人里離れた森の中の小屋で住むようになった。



弟と一緒に客人の分まで夜ご飯を作る。

「今日はね、おにいちゃんがいたから木の上の果物も採れたんだよ!」

キラキラとした瞳で話す弟。

「僕もおにいちゃんみたくおっきくなれるかなー?」

男はニコリと微笑む。

「いつかね。それよりこれ運んで」

採れた野草のサラダを弟に渡す。
運ぶ弟の足元を見遣る。

「あんたまたかかと踏んでる。そんなんじゃいつまでも大きくなれないよ。おにいちゃん見てごらん」

弟は男の足元を見る。

「おにいちゃんかかと踏んでない……」

「そうよ」

「そっか……、大きくなれないのはおにいちゃんのかかとが足りないからなんだ……」

虚ろな目で弟は呟いていた。



朝、弟が起きてくる。

「おはよ。ご飯出来てるからおにいちゃん呼んできて」

「おにいちゃんならもう出ていったよ?」

おかしい。朝から男のいる部屋から物音はしなかった。
階段を上がりながら違和感を覚える。

まさか弟が、いやそれを避けてここに移り住んだのに。
一人の男に会ったことで……。

まさか、まさかまさかまさかまさか

扉を開ける。






「みなさーん! 成長期のお子さんの伸び悩む身長に悩んでいませんか?」

フリップを持つ男がいた。

「そんな時にはこのサプリ、グングンノービル! これを飲むと成長期に不足しがちな栄養素を手軽に摂取できる! 満足度99%! 長年愛用されている長谷川さんはこれのお蔭で中学生の息子が学校で