おじさん

おじさんは新しいリモコンを作る旅に出た。

おじさんが僕にくれたのは掌に収まる白いリモコンだった。このリモコンで何が出来るの、と聞いたら、雪を降らせる事だけだ、と言われた。一つだけある丸いボタンを押すと、はらはらと雪が降ってきた。雪はどんどん降り積もり、様々な境界線を隠してしまった。おじさんと僕は雪うさぎを作ったり、雪だるまを作った。一緒にかまくらの入り口を掘っている時、おじさんはむやみやたらにこのリモコンを使うな、と言った。僕はこんな素敵なリモコンをどうして使っちゃいけないの、と尋ねた。雪は綺麗だが、お天道様が隠れてしまうだろう、そうすると困る人が出てくるんだ、とおじさんは笑って言った。僕は笑顔で頷いて、出来上がったかまくらに飛び込んだ。

箱に仕舞った小さなリモコンを見るたびにおじさんを思い出す。今年もまた初雪が降ってきた。